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長野県の最北端に位置し、全国有数の豪雪地帯として知られる、ここ飯山市。
冬といえば深い雪に覆われ、天然雪100%のパウダースノーでスキーやスノーボードが楽しめるのも魅力のひとつです。そんな良質な雪を求めて、毎年全国から集まるスキーヤー&スノーボーダーのみなさん……聞こえますか……!
「飯山の冬の楽しみ方は、スキー場だけじゃないんです〜!」
ということで今回は、冬の飯山に来たらぜひ注目してほしいポイントと合わせて、雪国らしさに触れるまち歩きをご紹介。今回の視点でまちを見れば、冬の飯山市での滞在がもっと楽しくなるはずですよ。
まだ積雪の少ない12月某日。今回の冬のまち歩きに協力してくれたのは、週末になるとスキー場に出掛けることが多いこちらのお二人。
・地元飯山をこよなく愛するスキーヤーTさん(写真右)
・飯山に来て3年目の移住者スノーボーダーSさん(写真左)
飯山駅に集合し、早速まち歩きを始めようとした、その時。
Tさん「ん……? ちょっと待った!!!」
「スノーブーツじゃなきゃダメ。ゼッタイ。」
まち歩きということで、普段から履き慣れた靴で来たSさん。グリーンシーズンの場合は問題ないですが、路面の積雪や凍結を考えるとスニーカーだと心配です。さらに、スニーカーが雪で濡れると足先から冷えてしまう可能性も。
Tさん「まち歩きを存分に楽しむには、スノーブーツが必須です。飯山駅で借りてから出発しましょう!」
ということで、飯山駅1階の信越自然郷アクティビティセンターへ。
各種アウトドアアクティビティに必要なグッズが揃う、この施設にはもちろん「スノーブーツ」も常備。保温性と防水性を兼ね揃えたブーツなのでまち歩きにもぴったりです。スノーブーツに履き替えて、いよいよ出発。
今回は、起点となる飯山駅を中心に市街地をぐるっと歩いて周ります。所要時間はおおよそ45分。基本的にフラットで歩きやすい道のりです。
Sさん「あの〜、こっちに来てからずっと気になっていたのですが、飯山の道路って場所によってすごく茶色っぽいところがありますよね」
Tさん「お、いい着眼点!これは消雪パイプによるものなんですよね〜」
道路の真ん中に規則正しく埋め込まれた「円形のもの」、それが豪雪地帯で大活躍する「消雪パイプ」です。
「道路から水が飛び出てる!? 」と驚く方もいますが、これは年間を通して一定の温度が保たれる地下水を利用した融雪設備。実は、この地下水に鉄分が多く含まれているため、路面が赤茶色に染まってしまうのです。消雪パイプのある道路は路面が見えていて歩きやすいですが、四方へ飛び散る水には要注意です。
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〈スポット〉
・飯山駅周辺
・消雪パイプが設置された市内各所
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Tさん「続いて、雪囲いですが近くでよく見ると芸が細いんですよね」
Sさん「普段 車に乗っていると気付けないですが、芸術的な雪囲いがたくさんありますね〜」
Tさん「雪から守るのは樹木だけでなく、石の灯篭も。笠の部分を取り外すことで崩れるのを防いでいます」
Sさん「積もった雪の重み、恐るべし……」
雪深い飯山では、樹木を守るための「雪囲い」が欠かせません。市内のあちらこちらで見ることができます。まちを歩けば、縄、藁、竹、板などの素材を用いて、さまざまなタイプがあることに気付くはず。地元住民による、芸術作品のような数々を見比べてみるもの面白いかも。
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〈スポット〉
・雪と寺の街シンボル公園
・飯山駅千曲川口
・市内各所
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Sさん「あ、これを見かけると雪国なんだなあと実感しますよね〜」
Tさん「ヨイショっと。これは140cmくらいですかね〜」
豪雪地帯では、消火栓が雪で埋まってしまうため、消火栓がやけに長い。雪が積もらない地域の方からすると、この長さは異様で「なんじゃアレ⁉︎ 」と思われることもありますが、積雪が多くなってくるとその特徴を大いに発揮します。
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〈スポット〉
・文化交流館なちゅら 付近
・飯山復活教会
・市内各所
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Sさん「なちゅらも、道路みたいに赤茶色の外壁が印象的ですよね」
Tさん「外壁は、経年変化を楽しめるようになっているのもポイントなんですよ」
独創的な建物「文化交流館なちゅら」は、国立競技場を手掛けた建築家として有名な隈研吾さんによる設計。雪に覆われた中にあっても、埋もれずに周囲と調和したデザインは必見。消雪パイプで赤茶色に染まる飯山のまちとリンクするような「コールテン鋼」の外壁は、元々表面に錆を施すことで、本体の鉄が錆びるのを防ぎます。今後の色合いの変化にも注目を。
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〈スポット〉
・文化交流館なちゅら
※写真は北側エントランス
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Sさん「道路の至るところに“棒”が立ち並ぶのも冬ならではの景色ですよね」
Tさん「そうですね、あれは除雪の時に欠かせない目印です」
(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ〜〜〜)
Tさん「あ、噂をしてたら除雪車が」
除雪車は除雪をする際、一面が白いので、道路の端がどこか分からなくなってしまいます。そこで道の境に棒を立て、それを目印にして除雪をするという、雪国には必要不可欠なアイテム。
豪雪地の場合、「腐らないこと」や「しなる」という特徴を生かして竹で作られたものが多く、飯山では「竹棒(たけんぼ)」とも呼ばれます。一般のドライバーでも吹雪時に運転する際、目印になるので大助かり!
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〈スポット〉
・市内各所
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Sさん「ここは雪国を象徴する通りですよね」
Tさん「梁につばめの巣の跡がありますね、雪に耐えられる丈夫なつくりですので、つばめも安心して落ち着ける場所なんでしょうね」
「雁木」とは雪よけの屋根のこと。冬を快適に過ごすための雪国ならではの知恵で、雪降りの日はこれがあるとないとじゃ、歩きやすさが大違い。約300mにわたる愛宕町の雁木通りには、通りと平行するようにお寺が連なっているので、文豪・島崎藤村が謳った「雪国の小京都」を体感できるスポットです。
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〈スポット〉
・愛宕町雁木通り
・上町
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Sさん「あ、マンホールみっけ!雪ん子スキーヤー可愛い」
Tさん「この絵柄は、長野県のスキー史を物語っているんですよね〜」
実は「長野県スキー発祥の地」と知られている飯山市。このマンホールには、藁で作った「みのぼうし」を被り、スキーがこの地に伝わった頃(明治45年)の「一本杖スキー」を楽しむ子どもたちが描かれています。
そんな一本杖スキーを飯山地方で普及させたのが、妙専寺の第17代住職・市川達譲(いちかわたつじょう)。日本にスキーが伝わった際に越後高田でレルヒ少佐より一本杖スキーを習い、長野県で初めてスキーのシュプールが描かれたのが、この妙専寺だといわれています。スキーヤーの聖地ですね!
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〈スポット〉
・飯山駅千曲川口
・福寿町交差点
・文化交流館なちゅら など
〈スキーにまつわるスポット〉
・妙専寺(愛宕町)
・飯山城址公園
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Tさん「意識しないとスルーしてしまいがちですが、住宅にもぜひご注目を」
Sさん「雪国で暮らす上で、住宅の構造は大事ですよね」
ほとんどの住宅で共通することが「屋根の傾斜が急勾配」になっていること。これは屋根から自然と雪が滑り落ちやすくなり、雪下ろしの手間を減らすため。また、瓦の屋根は雪が滑り落ちにくいことから瓦が使われていないのも特徴です。さらに、屋根雪が家の周りにたくさん落ちると1階部分が雪で埋まり、室内に太陽光が入らなくなるため、1階が車庫になっている高床式住宅も多く見られます。
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〈スポット〉
・市内各所
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Tさん「まち歩きの最後は、冬の名物スイーツを食べて締めましょうか」
Sさん「やったー!みんな大好きなアレですね!」
飯山の冬といえば、やっぱり外せないのがバナナボート。飯山にまだ洋菓子店のない昭和50年頃、和菓子店が作り始め、当時は十分な冷蔵設備がなかったことから冬限定に。片手で食べられ、腹持ちが良いことから、スキーブームの頃は爆発的に売れたとか。まち歩きのお供にもおすすめです!
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〈スポット〉
・市内和洋菓子店→マップはこちら
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厳しい冬を少しでも快適に、楽しく過ごそうと考えられた雪国の知恵は、まちの至るところで見つけられます。
スキー場へ向かうバスの待ち時間やアフタ一スキーに、ちょっと意識しながらまちを歩いてみませんか? 不思議に思ったことは、道端で除雪している住民の方々に聞けば答えてくれるはずですよ◎
では、みなさまよい週末を!
観光に関するお問合せ | 信越自然郷 飯山駅観光案内所 |
電話 | 0269-62-7000 |
公式WEBサイト | https://www.iiyama-ouendan.net/ |
執筆:くわはら えりこ
撮影:太田 孝則
※撮影の時だけマスクを外しています
記事公開日:2022年2月9日